世界の鉄道<東工大EXPRESS>
☑今回の区間 ミラノ→ベネチア・サンタルチア
☑イタリア版新幹線、フレッチャロッサでベネチアへ。
ミラノ中央駅でフレッチャロッサと対面
北イタリアの大都市、ミラノ中央駅にやってきました。ミラノ中央駅から本日向かうのは、イタリア随一の観光都市、ベネチアです。
ミラノ→ベネチアには、イタリア版新幹線、イタリア国鉄のフレッチャロッサが30分おきに運行しており、大幹線を形成しています。
座席の様子や、社会の雰囲気、乗り心地、車窓などを味わっていきます。
今回のコースは、北イタリア。
およそ2時間30分の行程。早期割引チケットなら、20€、3200円程度で乗車できます。
旅の始まりはミラノ中央駅
ミラノ中央駅はイタリア国鉄の終着駅で、頭端式ホームを形成しております。駅舎は伝統的な荘厳な石作り。ルネサンス様式をかたくなに守っているように感じます。
駅の内部の側面には様々な彫刻が施されているようで、例えば、ファシズム〇周年記念、とかそういうものもあるそうです。
駅のホームは、実は正面の駅舎から3分ほど歩いたところにあり、意外と構造は複雑です。
ショッピングモールを抜けると自動改札があり、切符をかざします。イタリアの主要駅にはしっかりと自動改札があります。
自動改札が、荘厳な駅舎の柱にすっぽりと埋まっているという、なんとも言えない作りです。(写真)
中央駅は「チェントラーレ」
イタリアの中央駅は、イタリア語で、「チェントラーレ」と称するようです。イタリアらしい独特な言葉の響きが耳に残ります。
「ミラノチェントラーレ」
ドイツは、「HauptBahnhof」、オランダは「Centraal」のように、国それぞれで呼称が違うのも、比較対象としては面白い例でしょう。
ホームでフレッチャロッサと対面
流線形チックだが曲がった鼻の超特急。おおよそ10~15分前の入線です。
側面には、かっこいい書体の「FRECCIAROSSA」の文字が。イタリアカラーに染められていて、旅情が湧いてきます。
【二等車】座席をチェック
さて、そんなフレッチャロッサ、座席を見てみると、なんともエグゼクティブなつくりになっています。
雰囲気はまさにJALかエアアジア・X。まるで航空機のような外見をしています。シートピッチは東海道新幹線のそれより多少狭いくらいです。
一方、枕部分のつくりは豪華で新幹線のそれとはくらべものにはなりません。
ミラノ→ベローナ
さて、フレッチャロッサはミラノ駅を滑り出し、途中駅のベローナへ向かいます。
特筆されるべき車窓は、アルプスの展望が期待できる点です。
とくに、ミラノからベローナの間には、湖越しのアルプス山脈を展望できる贅沢な箇所があります。超特急とはいえ、車窓の景色に溶け込んでいくかの如く車内はゆったりとしております。
車内には、欧米人が多いですが、日本人や中国人、韓国人も乗り込んでいます。
周囲は、平野というよりかは丘となります。丘の上には牧草が少々広がり、遠景にはアルプスを望む、そういった構図です。
ゴミ箱あり
フレッチャロッサの座席にはごみ箱があります。
ペットボトル1本程度しか入らないのですが、清掃が意外と行き届いておりました。
コンセントあり
さて、コンセントもついています。窓側のシートでなくてもついているようです。
USBのタイプではなく、ヨーロッパでは標準の丸型のものなので変換器は必要です。
荷物置き場あり
スーツケースなどを置く荷物置き場はあります。一両ごとにあり、超特大スーツケースが5個ほど入るロッカー的な場所がありました。防犯など考慮されているはずもないので、できるだけ車両の端の座席を指定して監視できる場所に着席するのが正攻法な気がします。
Wi-Fiが通じない
さて、そんなフレッチャロッサですが、Wi-Fiが弱すぎるという問題がありました。残念ながら車両や車体の事情に左右されそうなので、フレッチャロッサのWi-Fiをあてにするのはよくなさそうです。
フレッチャロッサの子分にあたる、フレッチャビアンカなどの下等列車にはそもそもWi-Fiの設定がないところもあります。
ベローナからベネチア・サンタルチア駅へ
さてベローナを過ぎ、フレッチャロッサは高速度で東へ向かいます。
イタリアの高速線は、
①ナポリ→ローマ→フィレンツェ→ボローニャ→ミラノ→トリノ
②ボローニャ→ベネチア
③ミラノ→ベネチア
というような系統に分かれています。
もちろん主要都市を通る①が主要な運行ルートですが、しっかりと②や③の分岐路線も整備されています。
ベローナからベネチアは、準高速新線のような形で、高速道路ではないが信号のないバイパスのようなイメージとなります。
フレッチャロッサには電光掲示板が至る所にあります。遅延の時間など割と丁寧に表示しているのも好感度が高いでしょう。
ベローナからベネチアの道は平穏な丘、というイメージ。決して平野ではないですが、特別みどころもなく、ゆったりとした車窓が続きます。
ベネチア・メストレ(要塞)駅
さて、ベネチアに差し掛かってきました。
ベネチアには2つの駅があり、それは、住民や商業施設が多いベネチア・メストレ駅と、観光地のベネチア・サンタルチア駅です。
ベネチア・メストレ駅は日本語訳にすると、ベネチア要塞駅。海にわたる前の直前の駅で、ここに、各方面からの線路が集結してベネチアの終着を目指します。
余談ですが、意外とメストレ駅で降りる地元住民が多く、観光客がサンタルチア駅と勘違いして謝って下車しかねない気がします。
ベネチア・メストレ→サンタルチア駅
いよいよ、この度最後の区間となりました。
ここの区間の名物といえば、海上を列車が進んでいくところです。
近隣の土地が浅瀬となっており、海面ぎりぎりに住居が立っているのを確認できます。
視界にベネチア本島が浮かんできます。この美しさ、そしてこの高揚感。地図や高校の社会科資料集でずっと見ていた、あの景色が待ち構えています。
高揚感を抱いたまま、列車は海上橋梁をひた走ります。およそ6分の海上の旅です。
高揚感に包まれながら列車に揺れる、そんな優雅な感情を5分もの時間、味わえる区間は世界を探してもそう多くはありません。
滑り込むようにサンタルチア駅、到着。
ベネチア・サンタルチア駅
ベネチアの終着駅、サンタルチア。宮脇俊三がイタリアで一番素晴らしい駅名と絶賛した、そんな話を思い出します。
昔、サンタルチア教会というものがベネチア本島にあり、その教会を取り壊して駅にした経緯があり、サンタルチア教会を偲ぶように、この駅名になったそうです。
地上時代の長崎駅を彷彿とさせるような、終着駅の旅情です。
島の上にあるとは思えないほどの頑丈で重厚感のあるわけで、一瞬島の上にいる、といったことを忘れさせます。
駅の目の前は、運河。鉄道は終着駅。乗り換えは水上バスになります。
さて、ベネチアサンタルチア駅からの展望をお届けして、今回の記事を締めます。